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プレママわくわくセミナーにて講話!

以下は、平成30年10月6日に、とかちプラザレインボーホールで行われた「プレママわくわくセミナー ハロー赤ちゃん」での講話を抜粋して掲載しています。
当診療室の子どもたちへの取り組みテーマであり、参考にして頂ければ幸いです。

PDFプレママわくわくセミナーハロー赤ちゃん(180KB)

講演「赤ちゃんの成長と歯の健康をテーマに」

これより、お子様を育まれる方へ、「お子様の口腔の健全な発育のためのポイント」をお伝えできれば!と思います。

そのキーワードは、「しっかり噛めて食べられる」、「しっかりと鼻で呼吸できる」そうすると、「左右対称な良い顔になれる」という事なのです。

この3つの頭蓋骨格は、左から乳歯列の頃、永久歯への生え換わりの小学生の頃、そして成人となっています。そして脳が収まる頭蓋、その下に上顎骨、そして耳前の顎関節で頭蓋とジョイントし、筋肉で吊られる下顎骨となり、その三つの部位の成長は、同時に並行して大きくなるのではなく、それぞれの部位での成長のピークがずれてやってきます。そして今の多くの子供たちの歯が並びきらない原因に顎骨の成長不足があり、特に上顎骨の成長不足を危惧しています。上顎の成長が良好ならば、のちに進む下顎の成長も良好となります。

まず、「お子様の上顎の成長を応援しよう!」が、重要なポイントです!

こちらは上顎を下から見た写真です。左側は、理想的なU型歯列で、右側は狭窄したⅤ型歯列です。そして左の写真の矢印の「スポット」という部分は、普段閉口している時に舌先が付いているべき所です。また、右の狭窄歯列の中央部の青白い部分は上顎の天井ですが、これは上方にせり上がっているのを示し、天井の高さ顎の成長不足のサインです。

左側の図は、人の顔を横からカットした断面図で、前から口唇、上下の歯牙、舌、気道、食道、背骨が見えます。そして狭窄歯列のケースでは、上顎の天井が高いという事は、その2階にある鼻腔の床が付きあげられて、スペースが狭くなり鼻の通りが悪くなるリスクにもつながります。つまり顎が劣成長だと、鼻腔にもマイナス要因となってしまうのです。

このグラフは、20歳までの人の臓器の成長パターンが4種類ある事を示しています。前述の上顎骨の成長は「神経系型」となり、実は5才頃までに80%の成長が終わっており、小学生になってから残り20%を緩やかに成長する事になります。

小学校に上がって「歯並びが大丈夫かな?」と直面する時、「成長期だから顎も成長するし!」と願っても、既に8割がた成長が済んでしまってるという事なのです。

そこでその幼少期の成長80%を勢いづかせるポイントは何でしょうか?

答えは、「日常の食習慣」です。

このグラフは、時代別の咀嚼回数の変化を表します。現代は確実に軟食文化です。戦前に1日食事で1,400回噛んでいたのに、今では600回で食事終了!咀嚼は、歯だけでなく、口唇、頬、舌が唾液と絡めて脳と交信しながら協調運動し、そして嚥下に移行します。特に「舌」は大活躍で、食物を味わい、左右の奥歯の上に振り分けて乗せて更に咀嚼を促し、嚥下できる食塊を形成します。それらの毎日の運動、刺激が、顎の成長も促進しているのです。

咀嚼、嚥下運動をする事は、脳の感覚野、運動野の約40%のエリアに関係するとされ、その運動が低調で有ると脳の神経伝達や血流も少なくなってしまいます。

生きるための「食事」は、栄養摂取のみならず発育期の身体の成長発達と大きく関係しているのです。

これは睡眠時無呼吸のある方の側方レントゲン写真です。無呼吸のリスクとして肥満が挙げられますが、特に日本人では痩せている方も該当するケースが少なくなく、その理由は顎が小さい事と言われています。

顎の成長不足が、気道の狭窄に関与しているという事です。

そして睡眠時無呼吸症は、循環器疾患をはじめとする多数の病気のリスクとなり、また事故の発生や労働生産性の低下など大きな社会問題、経済的損失につながり、国を挙げて取り組むべき問題と考えられます。

これは当診療室にいらした小学生の側方レントゲン写真です。気道も見えます。

そしてこちらも別の小学生の側方レントゲン写真です。
この子たちの気道が、前の子たちのものより太くないですか?
どうして同じ小学生でもこんなに違いが生じるのでしょうか?
個性ですか?
もちろん遺伝的な骨格の個体差は存在しますが、多くは顎の側方にそして前方への成長が不足している事に起因しているのです。

今までの事をまとめると、顎の成長不足で歯並びが悪くなるという問題のみでなく、鼻の通りは悪くなり、口呼吸習慣だと喉の乾燥による感染もし易くなり、気道が狭いままだと発育や睡眠にも大きく影響するというリスクが有りますよ!という事なのです。

口腔機能の発達は、産まれてすぐから始まっています。そして離乳後、遊びながらのグチャグチャ掴み食べは、親のイライラも上昇させるかと思いますが、この時期にお子様は手掴みで自分の食べる「一口量」を習得し、咀嚼のトレーニングをしている大切な期間ですので、是非おおらかな気持ちで見守ってあげて下さいね。

そして20本乳歯が生えそろってからの食習慣が、顎の発育を含めての「勝負!」とお考えください。「鉄は熱いうちに打て!」です。

こちらは配布資料ですが、顎の発育そして良い顔づくりの3原則として、その1.食事のハードルを低くしてはいけない!まず前歯からワイルドにかぶりつく食習慣を!前歯への刺激は、よい顔づくりに重要です。

そのためには、食物を大きくカットする、噛んでいる途中で水を飲まず、食べ物をごっくんしてから水を飲む事。これで噛む回数が稼げます。一律に30回噛みましょうというより、現実的そして自動的だと考えています。トウモロコシなどは、絶対ほぐしてあげたりしてはいけません。前歯でかぶりつきを!スルメをぐいぐい前歯でしゃぶる!なんて素敵ですよ!

食べやすく飲み込みやすい優しい食形態が多いと、あとで「アダ」となりますのでご注意ください。

ポイントその2. 呼吸は、鼻でする習慣を身につける事!

そのポイントは、舌先が上顎の天井前方の「スポット」に閉口時に付いていられる適正な筋力が有るかどうかです。舌の筋力が無いと、下顎が下がり、合わせて下唇が開くことで口が開き、すると呼吸としては抵抗が無く楽な「口呼吸習慣」となってしまいます。それを鍛えるのが、「あいうべ体操」の励行となります。鼻呼吸環境のための魔法の4文字です。

最後にその3. 日常の姿勢・癖にご注意を!

特に代表格は、頬杖うつぶせ寝です。これは歯列を狭窄させ、顎もずらす大きな要因です。そして顔のゆがみにつながり、中には体のゆがみにもつながります。

私たちの診療室では、そのリスクのある患者さんの顔貌の左右の目の大きさ、口元の高さ、顔の非対称性をチェックしています。

色々な顔には、色々な歴史あり!

良い歴史をつくれるかどうかは、お子様を育まれるご家族の知恵と熱意に尽きると考えます。是非これから、素晴らしい歴史をつくって頂ければと思っています。

本日は短い間に専門的な事を詰め込ませて頂きましたが、とても大事な事ですので今後は、かかりつけ歯科医を賢く利用され、楽しくやりがいの有る育児を進めて頂く事を願っております。

ご清聴ありがとうございました。

平成30年10月6日「プレママわくわくセミナー ハロー赤ちゃん」講話を抜粋

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