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口呼吸・二酸化炭素の問題とは?

口呼吸をつづける事。それは体に負担をかけた呼吸です。

口呼吸をつづけることが、体に良く無いってホント?

口呼吸習慣によって、冷たい乾いた空気を直接気管に取り組むこと の弊害や、口腔内の乾燥によって咽頭や扁桃の炎症、唾液の抗菌システムの低下による口腔内の感染が起こりやすくなるのは、問題です。
それと合わせて、体内の「二酸化炭素」を過放出する大きな問題があります。それは、深呼吸も同じく体によく無い理由と同じです。

大気中の二酸化炭素濃度は、0.03%ですが、呼気中では、その150倍の4.5%となって排出されます。一見、いらない排ガスとも考えられがちな二酸化炭素ですが、生体には重要な働きがあります。

二酸化炭素は、呼吸の指令塔。

二酸化炭素は、脳幹にある延髄の呼吸中枢に働きかけをして、体内のガス交換をコントロールしています。動脈血内での二酸化炭素濃度は、40mmHGですが、この二酸化炭素濃度が低下すると、脳は、呼吸をゆっくりするように指令し、二酸化炭素の体外放出を下げます。つまり一定量の二酸化炭素が生体内には必要という事です。
逆に、大きな呼吸と言える、腹式呼吸でない口呼吸や過呼吸は、大量に吸気(吸い込み)することによって、過剰な酸素が、一部活性酸素となって、細胞を傷害するリスクの問題が考えられます。また、大量の呼気(吐き出し)によって、生体に必要な二酸化炭素も必要以上に放出することになります。

過呼吸の際に、紙袋などを口にかぶせて自分の呼気中の二酸化炭素を再呼吸させる「ペーパーバッグ法」という方法があります。これは、不安やパニックなど、自律神経の中の交感神経が優位になると、呼吸回数が増加し、過剰に体内の二酸化炭素が排出されることによって、呼吸の指令系統のバランスが崩れ、さらに過呼吸になる悪循環となります。その際に呼吸の司令塔である二酸化炭素を大気中よりも高濃度(呼気中の二酸化炭素濃度は大気中の150倍)で体内に取り込むことによって、呼吸バランスを正常化することを意図した方法です。

二酸化炭素によって、体内の酸素運搬が左右されている。

呼吸で体内に入った酸素は、血中のヘモグロビンと結合して運ばれ、必要とされる組織や臓器で結合が解かれて酸素が放出されます。この運搬は、動脈血中の二酸化炭素濃度に左右されています。必要量の二酸化炭素が存在しないと、ヘモグロビンは結合した酸素を放出しません。これを「ボーア効果」と言います。つまり、体内に一定量の二酸化炭素が存在しないと、効率よく酸素が体の隅々まで運搬され、必要な組織で供給されないという事です。

大きく息をするとき、大量の酸素を体内に取り入れても、すでに酸素量は飽和している(十分)ので、血中の酸素濃度の改善には働かず(過剰なので余計なお世話)、二酸化炭素レベル(割合)を低下させてしまいます。また、大きく吐き出すことで、さらに体内の二酸化炭素濃度が低下します。つまり口呼吸や過呼吸では、体内に取り込む空気量が多いことで、体内のガス交換能力が低下し、脳への血流も低下するということになるのです。

これは、大きく呼吸することが、生体のバランスにとって「理」に適っていないという事を示します。バランスの取れた呼吸とは、「小さな呼吸」いわゆるゆっくりと穏やかに少ない回数で呼吸する「鼻呼吸」を意味します。

二酸化炭素が充足することで、平滑筋を緩めます。

生体内の気管、消化管、血管などの「管」は平滑筋という筋肉でできています。その管の広さ・狭さを二酸化炭素が左右しています。生体内の二酸化炭素濃度が低下すると、平滑筋が緊張し、管が狭くなります。前述した過呼吸の際、二酸化炭素を多く吐き出すために生体内の二酸化炭素濃度が低下し、それによって気道が狭くなり、さらに苦しくなる悪循環になるという事です。そこで、二酸化炭素を体内に取り込むためにペーパーバッグするという仕組みです。

常に口呼吸をしている、または口呼吸になってしまうような過度な運動を続けていると、体内の二酸化濃度が下がることが多くなり、そのことによって血管が収縮(狭くなり)し、心臓は血流を促そうと過度に働き、高血圧症や心臓疾患を発症するリスクが多くなるという事です。この見えない体の異常事態(頑張り状態)は、自律神経の中での交感神経が優位になっていることを示します。自律神経のアンバランスは、体に危険な状態となります。

口呼吸習慣をつづけるのは体にとっても危険!

二酸化炭素の重要性を考えるとき、一見呼吸法のもう一つ「口呼吸」が、体内のサイクルをアンバランス化していくことが理解されます。そこで当診療室が強く患者様にお伝えしているのが、口呼吸から鼻呼吸への転換です。

鼻呼吸に転換するには、無意識下で口が閉じていることです。くちびる周囲の口輪筋の筋力ももちろん関係しますが、キーポイントは、下顎についている筋肉の塊「舌」の筋力です。食事での咀嚼・嚥下運動や発語運動でも舌の運動が大切ですが、それ以外のちょっとした時間にトレーニングできる「あいうべ体操」は、秀逸のお口の体操(舌の筋トレ)と考えています。小児の方のこれからの長い人生においての健康な体作り、中年以降の成人の方のこれからの病気リスクの軽減のために「鼻呼吸」は、最も大切なポイントであるといえます。そのことにしっかりと視点を置くことが、歯科医療の責務であると 当診療室は考えています。

参考文献)岩附 勝著 「ゆっくり美呼吸健康法」

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